安定した利益を出しつつ高配当な大手通信3社(NTT、KDDI、ソフトバンク)の22年3月期3Q決算が出そろいました。最新の業績比較と指標などを見ていきたいと思います。
22年3月期3Q決算
【売上】
22年3月期3Qの売上高はNTTがダントツでソフトバンク(以下SB)、KDDIと続きます。ドコモと比較していたときは、横並びでしたが、NTTがドコモを完全子会社したことで、NTTと比較しています。売上高前年増減率はNTT+2.1%、KDDI+2.3%、SB+9.6%となり、成長率は過去からもそうですが、SBの売上高成長率は高いです。SBの増収効果ははヤフー・LINEの寄与(前期比+2863億円)が大きいです。
【営業利益、税引前利益、純利益】
営業利益の前年増減率はNTT+2.5%、KDDI+0.4%、SB△2.4となりました。前年増減率の比較すると差は大きくないですが、NTTが一番よい結果となりました。
NTTの営業利益の対前年比ではドコモの移動通信事業が△521億円でしたが、光回線サービスの地域通信事業が+455億円、NTTデータ関連のデータ通信事業が+602億円となり、全体としては対前年比営業利益が373億円増加しました。
KDDIは前年比でモバイル通信料+70億円(通信ARPUが減少△564億円、MVNOやローミング収入増加+634億円)、auでんき、auPAYカード、スマートパス等のライフデザイン領域+100億円、ビジネスセグメント+68億円となり、営業利益は∔35億円増加しました。
SBは前年比でヤフー・LINE事業が+343億円、法人が+121億円となりましたが、モバイルの通信料値下げでコンシューマ事業が△564億円となりました。全体としては、前年比△204億円となりました。
今回各社は携帯の廉価ブランドを市場投入したことで、営業利益の前年比影響はNTT(ドコモ)△521億円、KDDI△564億円、SB△564億円となりました。
税引前利益についてはも営業利益と同様な傾向となっており、前年増減率でNTT+3.9%、KDDI+0.8%、SB△2.5%となりました。
純利益についてNTTはドコモ完全子会社化による利益取り込みもあり、1兆303億円 前年増減率+24%と大きく増加しました。KDDIは+1.0%、SBは△3%となりました。
22年3月期通期予想(営業利益)
今回の3Q決算発表でNTTのみ上方修正(営業利益+150億円)しました。3社の通期の営業利益予想を比較します。営業利益の前年増減率はNTT+4.4%、KDDI+1.2%、SB+0.4%となり、各社微増ですが、NTTが一番よい数値を予想しています。売上高に対する営業利益率は各社高いですが、KDDI 19.6%、SB 17.7%、NTT 14.3%の順となっています。
各指標
予想PER、実績PBRの数値を確認します(これらの指標のみで株価の割安割高を判断するのは難しいですが、参考になります)。また、ROE、ROAの数値も確認します。
【PER】
予想PERは、NTT 10.8倍(過去実績9.0~12.4倍)、KDDI 12.9倍(過去実績8.9~12.6倍)、SB 13.7倍(過去実績12.2~15.5倍)となっています。3社のPER差で割安割高の判断は難しいですが、日経平均の予想PERは13.7倍(2月10日)ですので、PER的には割高な銘柄はありません。NTT、SBは過去実績の範囲内ですが、KDDIは最近の株価上昇で過去実績よりやや高い数値となっています。
※PER(株価収益率)=株価÷1株当たりの利益 一般的に低い方が割安とされます。
【PBR】
PBRはNTT 1.46倍、KDDI 1.71倍、SB 4.36倍とSBが高い数値となっています。日経平均のPBRは1.24倍(2月10日)に対しては高く、特にSBの数値が大きいです。自己資本比率の数値もあわせて確認すると、NTT35.3%、KDDI46.3%、SB13.5%となっており、SBは有利子負債が多いため、自己資本比率が低く、PBRもNTT、KDDIよりも大きい数値です。SBは他の2社と比較すると負債も活用しながら財務レバレッジをきかせた事業運営をしています。
※PBR(株価純資産倍率)=株価÷1株あたりの純資産 一般的に低い方が割安とされます。
【ROE】
ROEは自己資本に対して、どれだけ有効に利益を上げているか表す指標で、8~10%程度を超えるとよいとされています。3社とも10%を超えています。SBが30.4%とNTT、KDDIより高いのは、有利子負債が多いことも影響しています。
※ROE=純利益÷自己資本×100
【ROA】
ROAは自己資本と有利子負債をあわせた総資産に対して、どれだけ有効に利益を上げているか表す指標で5%程度が目安とされています。NTT4.8%、KDDI6.2%、SB4.1%となっており、KDDIが一番高い数値となっています。
ROA=純利益÷総資産×100
指標を確認すると、自己資本比率が比較的高い安定感あるKDDI、NTTか、有利子負債も活用しがら、高成長なSBか好みが分かれそうです。
株主還元
NTTとKDDIは継続的な増配を目指しています。SBは総還元性向が85%と非常に高いです。
銘柄 | 株主還元方針 |
---|---|
NTT | 継続的な増配の実施を基本的な考えとし、自己株式取得についても機動的に実施 |
KDDI | 配当性向40%超と利益成長に伴うEPS成長の相乗効果により持続的な増配を目指す。 機動的な自己株式取得。 |
ソフトバンク | 純利益に対する総還元性向85%程度を目安。 機動的な自己株式取得。 |
今回の3Q決算発表でNTTのみ期末配当の上方修正を発表しました。今期予想配当利回りはNTT 3.5%、KDDI 3.3%、SB 5.9%とSBが圧倒的に高いです。SBは配当性向が81%と非常に高く、利回りも高くなっていますが、更なる増配は難しそうです。一方でNTTとKDDIの配当性向はそれぞれ38%、43%とまだ余裕があり、株主還元方針からも今後の増配が期待できます。過去実績でもNTTは10期連続、KDDIは19期連続増配となっています。
株主優待
株主優待はSBは制度なし、NTTは株主になってから2回dポイントがもらえるのみです。KDDIは毎年カタログギフトが贈呈され、5年以上保有すると内容がグレードアップします。
株主優待内容 | |
---|---|
NTT | 権利確定:3月末 dポイント贈呈 100株以上 2年以上3年未満 1,500ポイント 5年以上6年未満 3,000ポイント ※毎年進呈の対象となりません。同一株主番号で得られる最大ポイントは4,500 |
KDDI | 権利確定:3月末 カタログギフト贈呈 100株以上(5年未満3,000円、5年以上5,000円) 1,000株以上(5年未満5,000円、5年以上10,000円) |
ソフトバンク | 株主優待制度なし |
株価推移
このチャートは21年年初を起点として、上下に何パーセント変動したか比較したもので、日経平均(黒)、NTT(青)、KDDI(橙)、SB(グレー)で表しています。日経平均は22/2/10終値で+1.6%に対して、大手通信3社は上回って推移しており、KDDI(+21.7%),NTT(+21.5%),SB(+10.8%)でした。特にKDDIとNTTが好調ですね。SBは21年11月後半から下げ基調でその後、横ばいとなり、他の2社の上昇に出遅れている状態となっています。
※TradingView提供のチャート
保有銘柄
通信大手3社は営業利益率が高く、コロナ禍でも安定して利益を出しており、配当利回りも高い銘柄です。現在の配当利回りではSB、将来の増配も期待できるNTT、KDDI、株主優待も楽しみたい人はKDDI。通信大手3社に投資する場合、どこを選ぶか好みが分かれそうです。自分の場合は結果として、3社とも保有しています。現在の3社の合計投資金額はマイポートフォリオの15%を超えています。その中でもKDDIの投資金額が一番大きいです。
最後まで閲覧いただきありがとうございます。
※2022.2.10時点の情報です。株式投資はリスクがあるため、投資判断は自己責任でよろしくお願いいたします。